個人のメモも兼ねて。自分で使用したり、彫刻教室やワークショップの参加者の皆さんにおすすめしている道具や購入先を紹介します。
*個人的な使用感や独自の使い方を含みます。道具については随時研究中ですので、変更される場合があります。

■砥石

・シャプトン セラミック砥石「刃の黒幕」シリーズ
水に浸しておかなくても、霧吹きで表面を濡らせばすぐ研ぎはじめられます。
数字が大きいほど目が細かくなります。標準的なM15タイプ(厚さ15mmほどで、裏表両面使える)安いM5タイプ(5mmほどの砥石に別の石が貼ってある。片面のみ。)があります。使用頻度が少なければM5でもいいと思います。

#2000(グリーン) 刃こぼれはしていないけど切れ味が落ちてきた、という程度ならこの番手から研ぎはじめればいいです。
一番私が多用しているのがこちら

#5000(エンジ) 仕上げ用。もっと細かいものもありますが、木彫ではあまり必要ないと思います。

#1000(オレンジ)以前はこちらをよく使っていましたが出番が減りました。#1000で研いで直接#5000で仕上げようとすると傷をおとすのに少し時間がかかるので、#2000を使用したほうがいいと思います。
すこし刃こぼれしてきたときか、もっと荒い砥石を使用したあとに使っています。

KING 刃物超仕上用砥石 #6000 最終超仕上用 S-3
キング砥石 小さいサイズなので持ち運びもラクで、彫刻刀用としては十分な大きさなので、出先などでシャプトンの#5000に代わって使用しています。どちらかひとつ買っておけばいいと思います。
こちらもセラミック砥石で、説明書きには使用前3分ほど水に浸すとありますが、表面に水をかけるだけでも研ぎはじめられます。

・粗砥石(ダイヤモンド砥石)
大きく刃こぼれしたとき、刃先が欠けたときや丸刃になってしまったときは、荒い砥石でないとなかなかなおりません。
安いものでも大丈夫です。
荒い砥石は減りやすいのでしょっちゅう砥石面の直しが必要になりますが、ダイヤモンド砥石なら減って変形することはないのでその点はラクです。ダイヤモンド砥石は金属の表面にダイヤモンドの粒子が電着されているもので、水や油で潤滑させて砥石と同じように研ぎます。

・白棒
研磨剤を固めた棒状のもの。研磨機などにこすりつけて使うのですが、白棒を革にこすりつけて刷り込んだものを砥石のように使用して、仕上げに使うことができます。革砥(かわと)という商品も売っていますが革のはぎれでも十分です。
研磨剤の粒子は非常に細かいので、仕上げにしか使えません。仕上げ砥石で研いだけどまだいまいち切れ味が悪いときや、すこし切れ味を復活させたい、といったときに使います。

■小刀(印刀)

池内刃物 →ホームページ
小刀ひとすじ職人三代で作っていらっしゃる兵庫の刃物メーカー。
彫刻ワークショップでは◎美貴久作の12mmの印刀を主に使用。
そのままでも使用できますが、自分の手にあわせて木の柄をつけるとより使いやすいです。柄は彫刻ワークショップでも作っていただけます。(マイ小刀作り)

 

■その他の彫刻刀

道刃物工業 →ホームページ
道刃物の道具は値段は手頃ですが十分な切れ味と使いやすさだと思います。柄がついた状態で売っています。
長めに刃が入っているので刃が減っても柄を削って使いつづけられますが、刃物のみで売っている彫刻刀よりは寿命は短いです。
刃物鋼とハイス鋼のラインナップがあり、ハイス鋼のほうが硬い分、切れ味が続きしますが研ぎにくいので、あまり堅い木を扱うのでなければ通常の刃物鋼で十分かと思います。

刃物の種類

小刀(こがたな 印刀いんとう)使用頻度が高いので、池内刃物で販売しているような共柄(ともつか=金属部分を持って使える彫刻刀)のものを購入することをおすすめします。研いで減っても長く使えます。

丸刀(まるとう、がんとう) 刃のカーブの深さによって呼び方が違います。丸刀 浅丸 極浅丸など
カーブや幅を各種とりそろえておくと便利です。
・極浅丸は平刀のような用途で使え、わずかにアールがあるぶん削る抵抗が少ないので、私はよく使っています。
平刀  極浅丸で代用できることも多いので、私は平刀の使用頻度はやや低めです。
三角刀 仏像の衣の線やしわを荒彫りで刻むのに便利ですが。丸刀や小刀で済ませることができることが多いので私はあまり使用しません。他の刃物の研ぎにくらべ三角刀の刃を研ぐのは特に難しいです。

初心者の方におすすめ 印刀一本からスタートして、必要に応じて少しずつ買い足していけば結構です。
使う頻度が多いのは… 12mm印刀  9mm極浅丸 6mm印刀 6mm浅丸 3mm丸刀 1.5mm丸刀 12mmか15mm極浅丸
さらに買うなら… 9mm印刀 21mm極浅丸 24mm平刀 4.5mm 浅丸 6mm丸刀 9mm丸刀 3mm浅丸 1mm丸刀 etc
– 作品によって使いやすい刃物は違ったり、個人の好みもあるので、すべてそろえる必要はありません。

特殊な刃物
曲がり(スクイ)刀 先端が曲がった刃物。まっすぐの刃物では傷が残りやすいくぼんだ箇所などに使用。
柳ぞり 先端が大きく曲がった薄い両刃の刃物 普通の刃の届かない奥まったところなどに使用、私は曲がりの印刀はほとんど使わずこれで済ませています。
外丸(そとまる) 私はほとんど使用しません。丸穴をあけたり、棒状のものを丸めたりするのに使用。

■鑿(のみ)
・大工道具ではほとんど平ノミしか使いませんが、彫刻では丸ノミ(内丸ノミ)が便利です。
・道刃物で購入できます

■ハンマー
・たたく部分が樹脂になっているコンビハンマーかゴム槌をおすすめします。木槌だとかなり音がひびきます。
ある程度重量があり手になじむもの。ヘッドの径が大きいものが使いやすいと思います。実際に手で持って扱いやすいもの。自分の体格や使い方にあったものをさがしてください。

■のこぎり
・小さなノコは彫刻をするとき補助的に切り込みを入れるのに便利です。私が教室などで使っているのはカッターナイフのように刃を出して使うこちらのノコ。見た目は完全にカッターナイフなので、刃を出すとちょっとびっくりされます。持ち運びも安全で刃の交換も簡単。

・ノミで彫刻するときに補助的にノコを使う場合は、目が粗めで刃の厚いものが便利です。
複雑な形や小さな隙間にも刃が入れやすく、ノコを正確にまっすぐ引かなくても切り込みが入れられるのがポイントです。

 

 

■測定道具など

・トースカン 道刃物や前田木材で販売しています。手作りもできますが結構な手間がかかります。平らな床や壁面に対して平行線を引く道具です。立体にも線を引けるので、目の高さや体の中心線などの基準線を書いたり、仏像の体のパーツの左右の高さを確認したりするのに使います。

・さしがね 差金= 曲尺(かねじゃく)
仏像彫刻では寸尺目盛りのものを使います。シンワの5寸法師を一本持っておくと便利です。大きい作品を手がけるようになってから、長いさしがねをそろえていただけばいいと思います。L字の接合面が平べったいタイプのほうが便利です。

・ノギス
幅を計る道具です。通常ミリ単位のものしか売っていないので、寸尺目盛りのシールを貼って使用しています。
木彫の場合は通常そこまで精度がもとめられないので、安価なプラスチック製のもののほうが木を傷つけにくいので便利です。

・けびき
板に線を入れる

・筆記用具
鉛筆、シャープペンシル、ボールペン ボールペンは水に流れないものを。

・霧吹き
刃物を研ぐときや、木がかたくて彫りにくいときや、表面の急激な乾燥をふせぐために木の表面に水をかけたりするのに使います。
■彫刻刀とぎ機
たくさんの彫刻刀を早く研ぎたいときに。但し、刃が丸まりやすいので砥石で研ぐ補助的につかうことをおすすめします。
グラインダーのような粗砥石もついたもっと大型のものもありますが、動作音が大きいので使う場所や時間を選びます。