DAY 4
2014年10月25日
チトワン自然国立公園へ。
バスそして象の背
朝、7時に出発し、バス停までラジェンドラさんに送ってもらう。バスはツーリスト向けのきれいなものだ。バスや宿泊、自然公園のサファリなど一式の料金は、ちょっとこの旅のなかでは贅沢かなという金額だったが、それでもラジェンドラさんの計らいで、古い知り合いのロッジのオーナーに頼んでくれて、おそらくずいぶん安くしてもらっている。象に乗って自然公園の中に入る予定だが、そうしたツアーもだいたいロッジの宿泊などとセットになっているようで、フリーで行ってすぐ自然公園の中に入るというわけにはいかないようなのだ。このへんは完全に、お金のあるツーリストしか来ないようなところなので、この際多少の出費はいたしかたない。
カトマンズを出発したバスは、次第に市街地を離れて、美しい棚田の見える地域をすぎ、うねるような峠道を通って5、6時間。ようやくチトワンのバス集合所についた。
われわれの泊まるロッジのオーナー、ナメスワルさんが迎えに来てくれていた。こっちの車だ、と乗りかえた車は、1tくらいのトラックだろうか。幌をはるフレームはあるが完全にオープンで、クッションのないベンチ椅子が荷台の部分についた、男気あふれる車だった。スペアタイアが荷台の真ん中に鎮座しているので、タイヤのくぼみに荷物を入れ、ダイレクトに伝わる地面の感触を楽しみながら、ガタゴトゆられてロッジに向かう。澄んだ自然の中の空。自然公園の手前の地域は田畑がひろがり、ロッジやホテルが点々としている。みやげもの街のようになっている通りもある。数分走って、トラックはわれわれの泊まる、タイガー レジデンシー リゾートについた。
門をくぐると、整った広い中庭。囲むようにレストランの棟や宿泊棟がならぶ。高級リゾートというわけではないが、なかなかの豪華さだ。さっそくレストラン棟の前のテラスで庭を眺めながらランチ。ハンバーグのような食事がでてきたが、これもベジタリアンメニューである。同行のヒロム氏はべつにベジタリアンではないが、わたしのとばっちりでベジタリアン食にされてしまっている。まあ、でもべつに不満はないよね?
3時過ぎにレクチャーがあると告げられる。自然公園なので、事前に注意事項の説明なんかがあるのかなと軽く考えていたが、
連れられて行った先は、象乗り場だった。あれ、象に乗るの明日だと思っていたのに…
といってもあとには引けない。幸いビデオカメラなど最低限の撮影機材は持っていたので、そのまま象の背に乗って、エレファントサファリ開始。レクチャーというのはもう、実践の自然レクチャーということだったのね?
われわれを乗せてくれたかしこい象さんは、14歳の女の子。小柄だがたくましい青いTシャツの象使いさんを首に乗せ、背に乗せた鞍に、わたしとヒロムDの2人をのせる。計3人乗りだ。搭乗するときは物見やぐらのような2m半ほどの高さの木製の発着場に乗客が先にのぼっておき、そこに象を横付けしてもらって鞍にのりうつるようになっている。
はじめての象だが、まあ、歩くのに合わせてゆれはするけど、歩調はゆるやかなので、慣れれば背の上でカメラを扱ったりするのも十分可能な程度だ。メールを打ったり読書するのはおすすめしない。
象使いは巧みに象をコントロールし、出発して数分先で、まず、数十メートルの幅の川をわたる。深いところでは人の胸元くらいまでの水位はありそうだが、象はシュノーケルのように鼻先だけ川面に出して、ゆうゆうと川をのりこえていく。
人が通るには苦労しそうな背の高い草原や木々の間。緑の織りなす空間を象はずいずい進んでいく。象使いがときおり、木の棒で動物のいる方向を指し示してくれる。はじめに見たのは、サンバ・ディアー。丸っこいかわいい耳のやや大型のシカが、木の下でこちらをうかがっていた。
さらにライノと呼ばれる野生のサイを4頭ほど立て続けに見ることができた。ブォーブォーという力強い息遣いが聞こえるような距離だ。
こちらが乗っているのも象なので、エンジン音を出す車ほどは警戒しないのだろう
動物たちのかなり近くまで寄って撮影することができた。
ヒロム氏はここまで簡単にライノに出会えるとは思っていなかったので大満足。さすがにトラには出会えなかったが、ライノをこんなに何頭も見ることができるのはそうそうあることではないらしい。
この旅はなかなか運に恵まれているようだ。
通常は1時間ほどのエレファントサファリだが、ラジェンドラさんに仲介していただいたのが功を奏し、サービスで長めに歩いてくれた。ふたたび象乗り場のやぐらに着いた時には日が落ちかけていた。チトワンの川の向こうに沈む夕日。シャッターチャンスである。
ほかの国からのツーリストも多く川岸を歩いていた。同じ国からの旅行者と思われてか中国の方にもあいさつされる。渡し船に列になって乗っているツーリストも見かける、お土産物や旅案内の小さな店も並んでいる。ちょっと高級な観光地なのだろう。